中学時代

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「───早く帰れ」 「言われなくても帰るわよっ」 どうして、寂しそうな瞳で、淡々と語るのかよく分からなかった。 彼には「無意味」だと知るのは、もっとずっと後の話だ。 塾の帰り、よく彼を見かけるようになった。私は時間がある時は彼に話しかけるが彼はとても大人しかった。塾の先生に聞いてもただ苦笑いしただけだった。とにかく、ここら辺に住んでるんだろう。 「海、いつも来る?」 「毎日」 「なんで?」 「…関係ない」 「私、茉莉。矢野塾に通ってる。貴方は?なんで早く帰れって言うの?なんで…」 そんなに… 「寂しい顔をするの?」 日に日に気になってゆく彼。 彼の言う事なんて聞かない。私は彼と出来るだけ長く過ごすようにした。 寂しい瞳に同情の感情から生まれた「恋」なのだと私は思う。 「ね、私好き。貴方が好き」
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