白金色の天井

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人類が地球の重力圏から脱出を果たして数千年。 今や地球は大小無数のスペースデブリに包囲され、空は昼も夜も白金色の薄雲に覆われていた。 抜けるような青空と、煌めく満天の星空は、既に地球上からは消え去っていた。 煤けた太陽と色合いの悪い朧月だけが地べたを這う人々の顔をぼんやりと照らしていた。 月の周りには、はるか昔に建造されたスペース・コロニーが点在し、その数は数十にも及んだが、既に定期便は絶え、航路は失われていた。そもそもデブリの厚い雲を通過できる船の建造技術すら失われていた。 ただ、コロニーとの唯一の通信手段であるマイクロ波通信(アナログ音声のみ)だけが宇宙へと生活の場を移した同胞逹が健在である証であった。その通信局も、現在はたった1つとなってしまっていた。 そしてある日、そのマイクロ波通信すら途絶えた。 最後の通信記録には、通信手の興奮した音声が残されていた。 『我々は、遂に地球外生命体との接触を果たした――』
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