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あたしたちの家は閑静な郊外に建つ一軒家。
両親はデフォルトで家にはいない。自らインターホンを押すことも、覚えている限り片手で余るほど。
いつものようにあたしは鍵を鞄から取り出して回し入れた。
「由佳里!夕飯だよぉ」
「はあい」
ぱたぱたと可愛らしい足音が二階の階段から聞こえてくる。
ああ、幸せ。
幸せよ。和やかな午後の、二人の時間は。
なんとなくつけっぱなしのテレビの中で、はにかむティーン女優を横目に、由佳里の方が目がくりっとしてて可愛い、とか姉バカなことを考えていた。
姉バカ、いや、シスコンですけど、何か?
「おいしそうな匂い!きゃあーおでんだあ」
リビングの扉を開けた妹の顔がすぐさま綻んだ。それだけであたしは腰砕け。
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