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「村山旭(むらやまあさひ)先輩だよ」
頭上から金タライが落ちてきたような分かりやすいショックをあたしは受けた。
村山旭。村山旭といえばうちのクラスの問題児のひとり……しかもあろうことか女ぐせが悪いと評判だ。
妹のお相手としては最悪もいいとこ。
あたしは妹の前に手をついて土下座体勢を取った。妹は目を丸くしてあたしを見下ろす。
「由佳里、お願い! お願いだから考えなおしてぇ! 一生のお願いだから!」
あたしの脳内では既に村山旭抹殺計画がシュミレートされていたが、妹が嫌な思いをしない策を優先するのは当然だ。駄目なら、ターミネート。
「やだ。先輩かっこいいしー。今日昼休みに告られたんだあ」
甘い笑顔に気圧される。くらりとくずれおちて思わずウンと言いそうになった言葉を飲み込んだ。
「駄目よ、あいつろくでもないやつだから由佳里が傷付くだけよ!」
あたしは必死だかつてないくらい必死だ。女たらしの魔の手からあたしの天使を守らねば……!
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