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頭二つぶんくらい下の、ちょうどあたしの胸あたりで天使が顔をあげて微笑んだ。抱きとめた腕に柔らかい体の感触。必然的に上目遣いになる大きくて丸い瞳があたしを映している。
鼻血出そう。あたしのヴィーナス!
「おねえちゃん帰ろ?」
「うんうん帰ろうねぇっ。今日は何がいい?」
「ゆか、おでんがいいな」
美代のわざとらしい咳払いにあたしはメルヘンワールドから引き戻された。明らかな批難の目。やばい、怒ってるわ。
「あたしの存在無視ですか―? 深山由佳里ちゃん」
由佳里はぐりぐりとした目を細めて、高めの声で言った。
「ごめんなさあい、片町先輩っ。ゆか見えなかったの」
「あーそりゃしょうがないよね、お姉ちゃんがでかいからね」
でれでれしているあたしに美代は再び凍るような目線を浴びせた。なによ、フォローしたでしょ。
「あーもーとっとと失せなさい深山姉妹っ!」
険しい立て皺でにらみつける美代に追い立てられて、あたしたちは慌てて帰路についた。
もち、手をしっかりと繋いで。
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