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「おはよー」
「んぁ~っと、おはよ」
最近は妙に早起きな私の前に、鈴香が現れる。
大きなあくびをしていた私は慌てて口を隠した。
「桜、遅いね……。」
「そだね……。」
約束の時間を過ぎても桜が来ない。
特になにか話すわけでもなく、私と鈴香は桜を待ち続けた。
……三十分経っても桜が来ない。
いくらなんでも遅刻し過ぎだ。
不安になった私達は桜の携帯に電話をしてみた。
「どう?」
ワンコール、ツーコール……。
耳元で電子音が鳴り響く。
出る気配が一向にない。
「ダメ…出ない……。」
仕方なく終話ボタンを押して、鈴香の方を向く。
頭の中に嫌なことしか浮かんでこなくて、不安で泣きそうになる。
「鈴香ぁ……。」
「ったく、あの子は……。
仕方ない、迎えに行ってあげますか!」
私の不安を取り去るように、呆れた顔で笑う鈴香。
そんな鈴香の顔を見て、頭の中の悪い妄想を掻き消し笑った。
「うん…そだね!」
桜の家の前まで来た私達は、自然と桜の部屋に目をやる。
「まだカーテン閉まってんじゃん……。」
「まだ寝てんのー?」
閉ざされたカーテンを見て、二人で溜め息を溢しながらぼやいた。
──ピンポーン~♪
軽快なチャイム音が響き、家の中からドタドタと足音が聞こえた。
ガチャリとドアが開いて、桜のお母さんが顔を出した。
「はい……あら?
もう、あの子ったら……!
今呼んでくるから、ちょっと待っててね!」
桜に呆れながら、申し訳なさそうな顔をするお母さんに返事をして、玄関で桜を待った。
「今日は桜の奢り決定!」
「だよね、なににしよっかな~?」
ムスッとして言う鈴香に笑いながら答えた。
暫くして聞こえてきた声は、いつもの明るい桜の声ではなく……
悲痛な叫び声だった。
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