始まり

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《臨時ニュースをお伝えします》 「また臨時ニュース?」 最近、やたらと臨時ニュースが多い。 内容はわかってる。 いつも同じことだ……。 「何回も何回も……。」 チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばす。 その手はアナウンサーの言葉によって止められた。 《繰り返しお伝えします。 また足のない遺体がY県T町で発見されました。》 聞き覚えのある場所に私の身体はピクリと反応した。 《これで、今までに発見された足のない遺体は十一体目となり、警察は一連の殺人と同一犯だと見て捜査を進めています……。》 「嘘… Y県T町って…… モロこの町じゃん。」 「あら、やだ~! この町じゃない、物騒ねー。 アンタも気を付けなさいよ!」 エプロンで手を拭きながら、母がリビングに来て言った。 「ところで、琉依ちゃん…。」 「なに、ちゃん付けとか怖いよ。」 母の不自然な呼び掛けに、顔だけ向けた。 そこにあったのは、イヤに笑った母の顔。 「もちろん、宿題はやってるわよね?」 母の質問に笑うしかなかった。 宿題なんてすっかり忘れてた……。 「だから昨日のうちにやっときなさいって言ったでしょ!」 「あー、はいはいはいはい……。」 怒鳴る母に適当な返事をし、階段を駆け上がると、私は部屋に飛び込んだ……。  
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