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第二章 戦う理由 ‐Ⅰ‐
「黒衆(ニグレード)……。それが、俺達の敵」
いかにも重苦しい響きにアレンが渋い顔をすると、アスタロトはまるで緊張感の無い笑顔を見せた。
「そんなに構えることもないよー。ただの半黒(デミレス)なら大したことないから」
「大したことないって、俺達は半黒と戦ったことがある。そいつらは一人でもかなり強かったぞ?」
「君達が戦った半黒は多分、黒き存在も、その人間の心も強かったんだね。合成された黒き存在やその人の心が強ければ強いほど、半黒になった時の強さも大きくなるんだよ」
「確かに」
ヴァースが頷く。
「しかし、ゼロサイドはこう言っていた。黒き存在の合成に耐えられるのは強靭な心を持った者だけだと。組織化されるほど大勢、そんな人間が見つかるとも思えんが」
「だから発展させたって言ったんだよ。弱い心の持ち主にも合成できるように黒き存在の力を極限まで弱体化させるのね。それで、黒き存在の力が体に慣れた頃、黒き存在の力を元に戻すんだー。こうすれば、弱い心でも大丈夫らしいよー」
「だが所詮は弱い心、並みの黒き存在」
ドレッドが引き継いで言った。
「その程度なら俺達だけで倒せる。問題なのは『No(ノタートゥス)』を持つ半黒達だ」
「ノタートゥス??」
「『番号』という意味らしい。そのNoを持つ半黒は知る限りでも十五人以上いる。Noを持たない奴らとは比べ物にならない強さを持っているのだ」
「どうしてそんなに強いの?」
アテナの当然の疑問に、ドレッドはにべもなく答えた。
「奴らが全員、神の力を持っているからだ」
アレン、アテナ、クロノスは驚いたが、ヴァースは成程という表情で頷いた。
「マジか!? 神に選ばれてる人間がそんなにたくさん?」
「世界の人口は約三十六億人強と言われている。その中に神の力を持った人間は四十人程度しかいない(アスタロト談)」
「世界的に見れば少ないんだろうけど、それでも俺達みたいなのが四十人もいると思うと……」
アレンが難しい顔をすると、アスタロトが笑顔を崩さずに言った。
「いや、君達みたいな強い力を持ってる人間は少ないよー。中には自分が神の力を持ってること自体知らない人もいるしね」
「で、そのNoを持つヤロウが強ぇから、俺達に協力を求めたってワケか?」
「そのとーり!」
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