第二章 戦う理由 ‐Ⅰ‐

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 砂塵が舞う砂漠の闘技施設に、二人の男が対峙する。一方は殺気剥き出しの形相で相手を睨み、一方は落ち着き払いながらも相手をしっかりと見据えている。 「こんな施設まであるんだ……」  アテナが感心した様子で見渡すと、アスタロトは誇らしげに胸を張った。 「僕が造らせたんだ。ここで訓練の成果を競うんだよー」 「クロノスったら、手加減する気なんてさらさら無いみたいだわ。ドレッドさん、大丈夫かな」  言ってアテナはラフィアの顔をチラッと見た。ラフィアはやはり無表情で、もはやその顔で固まってしまっているのではないかと思えるほどだった。 「心配なのはクロノス君のほうだと思うよー」 「えっ?」 「丁度いいぜ。てめぇの実力、見せてもらおうじゃねぇか」 「実力を見る前に終わるだろうがな」  行ってドレッドは鼻で笑った。クロノスはさらに怒り、鎗を出して飛びかかった。難なく躱したドレッドは、スッとしゃがんでクロノスに足払いをかけた。体勢を崩したクロノスの背中にドレッドが回し蹴りを食らわせる。吹っ飛んだクロノスは空中で体勢を立て直し、着地すると同時に間合いを詰めた。 「容易く敵の懐に入るとは、愚かな」 「余裕かますのはこれをどうにかしてからだぜ! 魔の(ブリュー)────うぐっ!?」  その刹那、ドレッドはクロノスの後ろに立ち、刀を鞘に収め終わっていた。クロノスは腹部に激痛を感じ、その場に膝をついた。 “ぐっ……。また、抜いた瞬間が見えなかった” 「峰打ちだ。しかしこれが本当の戦いであったなら、貴様の胴から下は斬り落とされていたぞ」 「くそ、てめぇ……」
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