第二章 戦う理由 ‐Ⅰ‐

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「貴様のような奴が、戦場において一番初めに死ぬことになるのだ。生半可な実力で粋がるな。己の無力を知り、絶望の淵に立て。そこから這ってでも戻ってきた者だけが、真の強さを手に出来るのだ」  ドレッドの言葉一つ一つが容赦なくクロノスを貫く。 「彼は強い」  アスタロトは極めてにこやかだった。 「君達はこれまで、多くの死線を乗り越えてきたよね。でも、ドレッドはこれまで、多くの絶望を斬り裂いてきたんだ。物心ついたときからその手に刀を握り、僕が彼を見つけた時も、『斬る』以外の何事も出来ない子だった」 「そのドレッドに、お前が神の力の使い方を教えたという訳か」  ヴァースの口から迸った言葉に、アレンとアテナが驚いて顔を向ける。アスタロトも少し驚いた様子だったが、笑顔は崩さず言った。 「よく彼が神の力を使ってるって解ったねー。しかも、それを僕が教えたってことまで見抜いたんだね?」 「貴様らが只者ではないのは、初めて会った時からその気迫で解っていた。クロノスがやられるなら、神の力以外は考えにくい。同じ幹部であるラフィアも持っているんだろう?」 「流石だねー」  ドレッドは『闘神オーディン』に選ばれた『羅刹の指輪』の持ち主。ラフィアは『雷神トール』に選ばれた『瞬霆の指輪』の持ち主であるという。しかし、アスタロトの力はまたしても秘密だと言って笑った。アレンは少し不審に思った。ここまで秘密にする必要があるのか、ふざけた感じの奴だがやはり油断できない相手だ、とアレンは思った。 「僕らに協力してくれるのか、返事は明日訊くからね。今日は泊まっていくといいよー」  立ち尽くすアレン、アテナ、ヴァースと、悔しさに砂を掻くクロノスを残し、三人は去っていった。アレンはただ、これだけは言わねばならなかった。 「……オイ、せめて案内してくれ」  
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