第二章 戦う理由 ‐Ⅰ‐

5/13
前へ
/439ページ
次へ
 ふかふかのベッドに寝転び、アレンは呟いた。 「どうする? 奴らの話は嘘とは思えない。問題は、俺達がどうにかできることなのかってことだ」  四人は黙り込んだ。ドレッドは強かった。アレン達は自分が協力したところで、足手まといになるのではないかという思いに駆られていた。己の力を全てねじ伏せられたように感じてやまなかった。  砂漠の夜は、都会のそれとは比べ物にならないほど澄み切っている。数え切れない星々の煌きがアレン達を照らし出す。そんな夜空を眺めながら、アテナはベランダで風に髪を靡(なび)かせていた。 「……」 「風邪引くぞ、アテナ。砂漠の夜は冷えるから」  クロノスとヴァースを部屋に残し、アレンはアテナの横に並んだ。 「とっても綺麗よね。私、やっぱり外に出てきてよかった」  アテナはベランダから身を乗り出して、風をその身いっぱいに受けながら星空を眺めた。 「久しぶりの城の外、気持ちいい大自然の息吹。形は違っても、こうやってまたアレン達と外の世界に出てこられたことが、私は凄く嬉しい。世界を見ることが出来て凄く楽しい。でも、その世界を壊そうとしてる人達が現れた」  アテナはアレンを見つめた。 「アレン、言ったよね。仲間に出会えたこの世界を壊させはしない、って。私も同じ気持ち。だから、私は……」 「あいつらに、協力……するのか」  アレンも見つめ返して言った。 「それなら、俺にも戦う理由が出来た」  アテナが、何、と訊くと、アレンは優しく温かな笑顔で答えた。 「お前を護るため」 「……ありがとう」  アテナは微笑んだが、すぐにぷくっと頬を膨らませた。 「ってアレン、私じゃ危ないってこと? 私だってちゃんと戦えるんだから」 「おっと、悪い悪い」  二人は笑い合った。星々の煌きは、二人を包んで美しかった。  
/439ページ

最初のコメントを投稿しよう!

526人が本棚に入れています
本棚に追加