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寝室にはクロノスとヴァースだけになった。ヴァースは心配そうな顔でクロノスを見つめている。クロノスはわざと視線を逸らした。
「クロノス、仕方ないさ。彼らも神の力を持っているんだから……」
「そんなこと、俺達だって変わらない」
「彼らのほうが神の力に詳しいかも知れないし────」
「慰めるのはやめろ! 余計に気分が悪くなる!」
クロノスは思わず声を張り上げていた。
「そ、そんなつもりじゃ…」
ヴァースは珍しくおろおろしながら言った。
「うるせぇ! お前には解らねぇよ! あんな無様な────」
言いかけて、クロノスは自分の言動を恥じた。見ると、ヴァースは哀しげな表情で黙っていた。
「……すまない。お前に当たることないのに、最低だ……」
ヴァースは表情を和らげ、クロノスの肩に手を乗せて優しい声を出した。
「いいんだ。でも、一つ解って欲しい。きっと、悔しいのは君だけじゃないはずだ。アレンやアテナ、もちろん私だって、あんな力を見せ付けられて平気なはずがないだろう。苦労して得た力をいとも容易くねじ伏せられて、私達だって悔しいんだよ」
「ああ、悪かった……」
「それからもう一つ」
ヴァースは打って変わって、恥ずかしそうに手を口元に当てた。
「これから、私には謝らないでくれるか。その、何だ……。弱気なクロノスは見たくない、から……」
言ってヴァースは顔を背けた。チラッと見えるヴァースの頬がほんのり赤く染まっている。
「ああ、ありがとう、ヴァース」
クロノスは微笑んだ。
「よし、決めた! あのヤロウに借りを返すまで、奴らについてってやるぜ!」
「私も黙っている訳には行かないな」
二人は拳をぶつけ合った。
「クロノス、ヴァース、俺とアテナは────」
「協力してやんだろ? その顔を見りゃわかるぜ。俺とヴァースもさ」
「返事は決まったな。今日は寝ようか」
秘める思いは様々なれど心一つに進み出す強き覚悟を、この夜四人は得たのだった。
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