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「あれって、ベヒーモス……だよな? 何でまだ────」
「考えるのは後だぜ、アレン!」
アレンの隣に座っていた男が跳び上がった。右手の指輪が輝き、次の瞬間、指輪は鋭い鎗と化していた。常軌を逸した跳躍力に驚く人も何人かいたが、殆どの人の目は怪物に釘付けだった。
跳び上がった男が鎗を構える。そして怪物の額に勢いよく突き刺した。怪物は叫び声を上げ、霧が広がるように消滅した。その男、クロノスは難なく着地した。
「クロノス、少しは人の目も気にしたほうがいい」
時々、美形の男に間違えられる女、ヴァースが落ち着いた声で咎める。
「その言葉、そっくりそのままお前に返すよ」
ヴァースはどういう意味だと尋ねたが、クロノスは肩を竦(すく)めただけだった。
かつて人知れず世界を救った、アレン(本名レイヴェルク)、アテナ、クロノス、ヴァースの四人は、一旦集まって話した。
「黒き存在は、ゼロサイドを倒せばいなくなるんじゃなかったのか?」
「創造主が消えれば、創造物も消えると思ったのだが。ゼロサイドの城にいた黒き存在が全てではなかったという訳か。甘かった……。だが、なぜ一年も空けて?」
「あれははぐれてきた黒き存在だ」
突然聞こえた声に、四人は驚いて振り返った。見ると、二人の若者がこちらを向いて立っている。
一人はがっしりとした体躯で、恐らくは相当なつわものであろう気迫を放つ男。大きな斬り傷があり開かないらしい左目が何より目を惹いた。
もう一人はアテナよりも少し癖のあるロングヘアーで、男に劣らぬ気迫、いや、これは殺気とも言えるものを放つ女であった。印象的なのは、全く感情の無い表情だった。
「誰だ?」
ヴァースが代表して尋ねると、男のほうが答えた。
「俺はドレッド・アシュレイド。こっちは妹のラフィアだ。俺達は対黒衆戦闘組織、通称『ANBO』という機関から、貴様らを連れてくるよう承った者だ」
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