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「この辺で待とうか」
ファレンシアの城下町を素早く通り抜け、人目の届かない平野まで走ってきたところでアレン達は立ち止まった。
「アテナなら私達の気配を追ってこられるだろう」
「いいのかなぁ。王女だぞ、一応……」
十数分ほど黙って待った。時折クロノスが欠伸をし、アレンが座り込む程度の動きしかなかった。すると、町のほうから走ってくる女性がいる。アテナかと思いアレンは立ち上がったが、どうも雰囲気が違う。
「お待たせ! 着替えるのと城を抜け出すのに手間取っちゃって」
やはりアテナだ。しかしこれは……。
「お、お前、なんて格好だよ!」
アレンの顔が真っ赤になる。
「どう? 今回は最初から敵がいるって解ってるから、戦える服を選んできたの」
「最近の若い娘は肌の露出が多いな。風邪を引くんじゃないぞ」
ヴァースが困り顔で言った。しかし、クロノスがそれに反論する。
「いや、これが普通なんだって。だからヴァースもこういう────ぐふっ!?」
「却下」
突然クロノスが腹を押さえて倒れた。アレンはヴァースが素早くみぞおちを突いたのを見逃さなかった。強い……。
「……行くぞ。目的地はバクナ砂漠東のANBO本部だ」
何でそんな場所に、というアレンの表情を見てドレッドが付け加えた。
「僻地だからこそ己が育つ。また、敵の襲撃時には砂漠での戦闘に慣れた俺達のほうが有利になる。監視を遮る物が無いという利点もあるしな」
アレンとクロノスは、なるほど、と頷いた。
「遠いな。これを使うか」
ヴァースが腕時計の裏のスイッチを押した。クロノスがそれを見て言った。
「お前、時計も男みてぇにつけてんのかよ」
「悪いか?」
ヴァースに睨まれ、クロノスは小さくなった。
「ヴァースさん、今何したの?」
アテナに訊かれ、ヴァースは答えた。
「飛空艇を呼んだんだ。数秒で来るだろう」
「飛空艇!? だってあれは……」
「まあまあ、飛空艇の中で話すよ」
空の彼方から、白王金のボディがきらめく空飛ぶ船がやって来た。それは上空を旋回し、アレン達の近くに着陸した。
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