第一章 再転

6/9
前へ
/439ページ
次へ
「てめぇらのことも何か話せよ。俺達はてめぇらのこと何も知らねぇんだぜ?」 「話すことは無い。俺も、ラフィアもな」 「なんだよ、つまんねぇ。っていうかさ、ラフィアだっけ? てめぇ、俺達に会った時から一度も喋ってねぇじゃねぇか。自己紹介の一つもしたらどうだ?」  クロノスが突っかかるが、ラフィアは依然、無表情を護って黙っている。 「やめておけ。ラフィアは決して他人に口を開かん」  ラフィアはクロノスから顔を背けた。 「なんだよそれ。ヴァース以上に女らしくな────ぐふっ!?」  クロノスはまたしても倒れた。 「一言多い奴……」  アレンは溜め息をついた。 「そろそろ着くぞ」  六人は、焼け付く日差しが燦々と照る砂漠に降り立った。すぐ近くにANBO本部が建っているにもかかわらず、その形が熱気で歪んで見える。 「暑い……」  アレンが嘆く。 「一年前は砂漠なんて通らなかったからなぁ。まさかこんなに暑い所とは」 「フン、この程度でなんというザマだ。アスタロトはこんな奴らを本当に使う気か」  ドレッドとラフィアは全く平気という様子で、さっさと本部に入っていった。アレン達はとぼとぼと後についていった。 本部内は意外と涼しく、アレンは喜んではしゃいだが、ドレッドに睨まれて大人しくなった。砂漠という辺地に建っているとは思えないほどの設備の良さに、アレン達は開いた口が塞がらなかった。特に、トレーニング施設には目を見張った。 「ここだ」  最奥部と思われる部屋にアレン達は招き入れられた。 「普通の部屋だな」  どれほど凄い装飾が施されているのかと思えば、いたって普通のどこにでもありそうな部屋だったので、アレンは少し拍子抜けした。  視線を奥に向けると、ボスと思われる男が、いや、女か。性別の解りにくい穏やかな笑顔でこちらを見つめている。その瞳は優しく、およそ戦闘組織のボスだとは思えない。ボスがこちらに近づき声を発した瞬間、アレン達はさらに拍子抜けした。
/439ページ

最初のコメントを投稿しよう!

526人が本棚に入れています
本棚に追加