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竜樹と麻白は部室の前に来ていた。
部室と言っても剣道部ではない。
もっと妙な部活だ。
その名も「かおす部」。
かおすとは英語で書くと「chaos」すなわち混沌という意味。
世の中の混沌を片っ端から解き明かそうという趣旨の部活である。
なんでこんな部活があるかなんてことは誰にも分からない。
ただ分かることは、この部活に入部するには部長の許可が要るということだけで、あとは秘密裏にされている。
「失礼します」
ドアをノックして、中に入る。
すると、中には大量のオカルトグッズが散乱していた。
そしてその一番奥で、机に突っ伏している人がいる。
「雅先輩、朝から何をやっているんですか?」
竜樹がそう言うと、雅先輩と呼ばれた人物は、緩慢な動作で体を起こした。
「やあおはよう、竜樹君」
彼女の名前は桶狭間雅(おけはざまみやび)、なんか妖艶な雰囲気を携えた人で、かおす部の部長である。
そしてこの人は、どうやったのかは知らないが、「かおす部」という訳の分からない部活を、生徒会に直談判して立ち上げた人物である。
「麻白まで呼んじゃってどうしたの?何か面白いかおすでも見つけたのかな?無かったらみゅっ殺す」
「どういう殺し方だ」
麻白が突っ込みも兼ねて尋ねた。
「みゅっ殺すって言うのはね、両手を縛って木に吊し上げたあと、包丁で生きた内臓をえぐりながら殺すことだよ」
さも当然のようにエグいことを言う雅。
「雅先輩、朝からさらっとエグいこと言わないで下さいよ。まあ、面白いかおすは見つけましたが」
「ほう、それは本当か?」
麻白が食い付いた。
一応麻白も部長の眼鏡に敵った人物なのだ。
そういったことに対する興味は常人以上である。
ちなみに雅は本当に眼鏡を掛けている訳ではない。
「じらしてないで早く言わないとみゅっ殺す」
麻白まで「みゅっ殺す」を使い出した。
「言いますって。昨日は『都会のドラゴン』」
「見つけたのかッ!?」
割り込む雅。
「最後まで言わせて下さい。『都会のドラゴン』と思しきモノを見つけました。廃ビルの中にいた人を、遠くからサーモグラフティで見たところ、ドラゴンのウロコの様な四角い模様が体中に浮かんでいたんです」
「ほほう」
「面白いわね」
「つきましては、是非調査に麻白先輩の力をお借りしたいかと」
「分かったわ」
麻白は嬉しそうに頷いた。
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