607人が本棚に入れています
本棚に追加
ジリリリリリリリ!!
「何イッ!!非常ベルだと!?」
「雅先輩、現実逃避はやめて下さい」
このジリリリリリリリは、この学校のチャイムである。
なんでこんなにうるさいかというと、校長の大内神人(おおうちかみと)曰く、
「普段の学校生活に緊張感を」
だそうだ。
ちなみに竜樹はこのことを、
「逆にいざ別の場所で非常ベルが鳴った時に緊張感が無くなる」
と否定し、麻白はこのことを、
「いざ出かけた先のビルとかで非常ベルが鳴った時に、かえって落ち着いた対応ができる」
と肯定している。
まあそれはどうでもいいとして……
「完全に遅刻だ……」
竜樹は憂鬱に階段に足をかけた。
━━━その時
階段の上から慌てた様子で人が走り降りて来た。
彼女は危ないアングルでスカートをちらつかせ、竜樹が思わず目を反らした先に、数瞬遅れで立ち止まった。
「あ、あのあの、非常ベルが……」
誰だこの娘。
と竜樹は思った。
背が小さく、あどけない顔をしていたので、竜樹は中学生かと考えたが、服装はこの学校の制服。
だが、見覚えはない。
「おっと、トラブル発生だね。竜樹君、後は君に任せた!!」
颯爽と階段を駆け上がる雅。
「ちょ、待っ……」
「そうか、すまないな、竜樹。後は任せたぞ」
麻白も雅に続く。
「え、そんな」
その場には竜樹と少女一人が残された。
「……毒を喰らわば皿まで、か。で、君はどうしてそんなに焦っているのかな?」
先輩達を若干恨みながら、竜樹は少女に向き直った。
「え、だって……非常ベルが……」
「……びっくりしたかもしれないけど、アレはこの学校のチャイム。知らないってことは、君、この学校の生徒じゃないね?」
竜樹は少女に疑いの眼差しを送る。
「……そうだったんですか!?え、えと、私、今日転校して来たので……」
「本当に?」
「本当です……って、じゃあ早く教室に戻らないと!!」
口ぶりからして嘘を言っている様には見えない。
まあいい、遅刻の言い訳ぐらいにはなるか。
そう計算した竜樹は、ただちに行動に移した。
「よし、だったら君、どこのクラスに転校して来たか教えてくれる?」
「えっと……2―Fです」
「2―F……ってウチのクラスかよ」
「ちょうどいいですね」
そういえば朝に転校生が来るとかそんな話を聞いた気がした竜樹だった。
最初のコメントを投稿しよう!