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2―Fの教室の入り口に着いた竜樹と少女は、先生の
「転校生の龍崎焔火(りゅうざきほのか)さん、入って下さい」
という声を聞いた。
「どうやら間に合ったようだね」
「はい、助かりました」
そう言って、焔火は教室へと入っていった。
パチパチ
軽い拍手とともに教室へと迎え入れられる焔火。
焔火は黒板の前で立ち止まると、後ろの入り口からコソコソと入ってくる竜樹を見て苦笑した。
「よし、それではさっそく自己紹介して貰います。どうぞ」
「ええと、私、この都会学校に転校してきました、龍崎焔火です。苗字はあんまり好きでは無いので、『ほのか』って呼んで下さい」
そう言ってにこりと笑う焔火に、クラスの男子は色めき立った。
「けっこうかわいいよな」
「うんうん」
「静かに」
生徒達(主に男子)のざわめきを先生が咎めた。
「ほのかさん、他に言うことはありますか?」
「あ、あの、1ついいですか?」
「はい、どうぞ」
先生に促され、焔火は小さく息を吸い込んだ。
「えっと、私は『都会のドラゴン』の噂について調べてみたいと思っています。その為に転校してきました。なにか情報を持っている人は教えて下さい」
What?
みたいな感じで空気が凍りついた。
「え、うあ、あの、私……なにか変なこと言いましたか?」
戸惑う焔火。
「え、なに?電波?」
「電波っ娘?」
「あれ、噂だろ?」
「七不思議とか都市伝説に近いよね」
「その為に転校って……」
やってしまった。
という風に焔火は青ざめた。
ざわめく教室を見かねた先生が、ようやく口を開いた。
「はい、みなさん。これから仲良くしてあげるんですよ。では焔火さん、席はあそこにありますから。となりの高城くんは、今日はまだ来て無い……あれ?」
先生は、いつの間にか高城くん(=竜樹)が席に着いている事に気付いた。
「あ、ども」
「高城くん、先生はどさくさに紛れて入ってくる子には育てた覚えはありませんよ?」
いやいや、育てるも何もアンタが担任になって一ヶ月も経ってませんから。
と、竜樹は思った。
「遅刻届けを取りに行きましょうね」
「はいはい……」
竜樹は肩を落として教室を出て職員室に向かったが、その口元はにやけていた。
「仲間、見つけたぜ」
竜樹は焔火の顔を思い出した。
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