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時は飛んで放課後。
ホームルームが終わってしばらく経ったが、焔火の自己紹介を知らない他のクラスの生徒が、いまだに転校生焔火の元に訪れていた。
そんな中、焔火は焦っていた。
確かに、転校生というだけで、たくさんの生徒が焔火に話し掛けてはくれる。
「ほのかちゃんって、どこから来たの?」
また女生徒のひとりが焔火に話し掛けた。
「南アフリカ」
適当に答える焔火。
「嘘ッ!?」
真面目に驚く女生徒。
「嘘じゃないですよ」
「え、でもほら見た目日本人じゃない?少し高校生より若く見えるけど」
「偶然ですよ」
あくまでアフリカ出身で通す焔火。
「偶然とかそういう問題じゃない気が……ていうか日本語上手いね」
「自分で言うのもアレなんですが、頭の良さには自信ありますよ」
「確かに頭はいいよね、ほのかちゃん。ここの転入試験に合格したんだから」
都会学校の転入試験のレベルは、入学試験と比べて果てしなく高い。
これは、大内神人校長の「その方がかえって天才が入学してくれそう」という意向でそうなっている。
もとい、焔火の受けた入学試験も、センター試験より高いレベルだった。
「確かに難しかったですよ。アレが解ける人は学校に来る必要は無いと思います」
「じゃあ、なんでほのかちゃんはこの学校に?」
「だから、都会のドラゴンを捜しに来たんですよ」
「ああ、なるほど」
「なにか知ってます?」
「いや、特に無いかな、あはは」
苦笑する女生徒。
この通り、焔火に話し掛けて来る人は誰も都会のドラゴンについて何も知らないのだ。
「はあ……」
朝から質問責めを喰らい続け、かつ収穫の無かった焔火はため息を着いた。
先程の女生徒で最後だったようだ。
時計を見ると5時。
一体どれだけの人と話したか、焔火は覚えていない。
さすが生徒の多すぎる都会学校と言ったところか。
ガラッ
教室の入り口から今になって生徒が入って来た。
「雅先輩、麻白先輩、いましたよ―!!」
入って来た生徒とは竜樹である。
そして麻白と雅が続く。
自己紹介のせいでクラスメイトから話し掛けられなくなった焔火は、竜樹が来たことに少し安堵を覚えた。
「あ、今朝の……高城くんでしたっけ?」
「覚えてくれてたんだ。それよりさ、これから『都会のドラゴン』捜さない?」
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