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「……はい?」
焔火は今聞いた言葉が信じられないといった風に聞き返した。
「だからさ、『都会のドラゴン』を捜しに行かないかってこと。君、確か今朝、『都会のドラゴン』に興味があるとか言ってなかった?」
「確かに言いましたけど……何の情報も無しに捜すだけでしたら行きませんよ」
あくまで慎重な対応の焔火。
「つれないね……と言いたいところだけど、実は目星はついているんだ」
竜樹は得意気に言った。
「目星……ですか?」
「詳しく話してもいいんだけど……それはウチの部活に入ってからということで」
「情報の代価に部活に入れということですか?それぐらいでしたら……」
竜樹の浅ましい条件に、やれやれと焔火はため息混じりに言った。
「じゃあ後は雅先輩、頼みます」
「さあ、それじゃあ入部テストを始めようか」
これまで黙っていた雅が、竜樹の前に出て話し始めた。
「そっちから誘ったのにテストがあるんですか!?」
焔火は不満の声を上げた。
「当たり前じゃないか。僕の部活に余計な部員は要らない。だけど優秀な部員は欲しい……だから入部テストは当然じゃないか」
自己中まるだしの雅。
「……どんな部活なんですか?」
「かおす部だ」
今度は麻白が話し始めた。
「かおす部?それは一体……?」
「麻白、今は僕が話しをしているんだ。邪魔しないでよ」
抗議の声を上げる雅。
「雅が部のことを話せば確実に美化しすぎるからな。ここは私が説明するべきだろう」
「俺もそう思います」
麻白に賛成する竜樹。
「あっそ。じゃあもう麻白が説明すれば?」
すねてみせる雅。
「よし、じゃあ話そう。ところで君、名前は?」
すねた雅を放置して、麻白は焔火に話しかけた。
「りゅ、龍崎焔火です」
その様子にたじろぎながら焔火は答えた。
「私は奈佐麻白、よろしくな、ほのかちゃん」
「は、はい」
麻白の鋭い雰囲気に押されがちな焔火。
「よし、説明するぞ。『かおす部』とは、世の中のカオス……則ち混沌について研究する部活であり、その実体とは……」
焔火はごくりと唾を呑み込む。
「そういう名目を称して部室を生徒会からせしめた挙げ句、そこでぐうたらしてる部活だ。主にそこの部長が」
「ちょっ……露骨過ぎますよ麻白先輩」
思わず竜樹は麻白に突っ込んだ。
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