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ドラゴン捜し第二弾
「さて、と。それじゃあ行くとしようかな」
焔火から手を離すと、雅は愉しそうに言った。
「あ、それとほのかちゃん、部員同士は必ず下の名前で呼び合うこと」
「え?なんでですか?」
聞き返す焔火。
「協調力を高めるためさ」
「わかりました」
「うん、素直でいいね。という訳で、各自家に帰って準備をした後、急いで竜樹の家まで行くこと!!」
「わかりました」
嬉しそうに言う竜樹。
「了解した」
楽しそうに言う麻白。
「り……竜樹君の家の場所がわかりません」
異性を下の名前で呼ぶことに対して若干抵抗を覚えながら、焔火は困った風に言った。
「それもそうだね……ねえほのかちゃん、ドラゴン捜しに持っていく予定の物とかある?」
「いえ……特には……」
「じゃあ先に竜樹と一緒に竜樹の家に行っておいてよ」
「え!?あ……はい」
焔火は一瞬動揺したが、雅の提案を了承した。
焔火の、竜樹のことを下の名前で呼ぶ時に間があったことや、今の態度から、竜樹は焔火が自分を嫌っているのかと思った。
「……別にいいけどさ」
竜樹は一人で呟いた。
そして5分後。
竜樹と焔火は二人で道路を歩いていた。
さっきから会話がない。
ああどうしよう。
竜樹が一人で悩んでいると、不意に焔火が口を開いた。
「今朝は……その、すみませんでした」
「へ?」
いきなり謝られた竜樹は、訳がわからなくなった。
「都会学校のチャイムが非常ベルだったなんて、私、知らなくて……」
「え?あ!はいはい、そのことか!」
「……なんだと思っていたんですか?」
「いやぁ、忘れてたよ。ごめんごめん、あはははははは」
笑いながら自分が何を言っているかわからなくなっている竜樹。
「あ、それとさ、雅先輩が下の名前で呼び合えって言ってたけどさ、そこまで無理に呼ぶ必要は無いから」
「……どうして?」
「いや、だってほら、龍崎だって、俺みたいな訳のわからん男に下の名前で呼ばれたくないだろ?」
「……別に、そんなことはありません」
「……そうなの?」
「……まあ」
そこまで嫌われてなかったのか?
と、竜樹は思った。
「……ほのか」
「はい」
「焔火」
「はい」
「焔火」
「しつこいです」
「ああ、ごめん」
と、いいつつ顔が笑っている竜樹だった。
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