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そんなことをしているうちに、竜樹と焔火の二人は竜樹の家に到着した。
「大きな家ですね、日本にしては」
「日本にしては?」
「あ、はい。私、アフリカから来たんですよ」
「ふうん、そうなんだ。あ、上がって上がって」
竜樹は焔火が冗談を言ったことを少し意外だと思った。
「お邪魔します」
竜樹と焔火は家の中に入った。
たくさんある畳の部屋の1つに焔火を通した竜樹は、自分の部屋からサーモグラスとテーブルを持ってきた。
「まあ、先輩達が来るまでゆっくりしなよ」
「はい」
竜樹は更に自分のカバンの中から干し柿を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「食べていいよ」
「なんでカバンの中から干し柿が出てくるんですか?」
苦笑気味に焔火は竜樹に質問した。
「おいしいよ」
答えになっていない気がした焔火だが、竜樹は多分干し柿が好きなんだろうと勝手に納得した。
「干し柿……なんかおじいちゃんみたいです」
「おじいちゃんで悪かったな」
「む、それではおじいちゃんが悪いような口ぶりじゃぞ、竜樹」
突然、ふすまの向こうから声がした。
「うおッ!?いたのかッ!?」
驚く竜樹。
「え?誰ですか?」
「ふぉふぉふぉ……」
急にふすまの向こうの人が笑い始めた。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ……すると金色の光と共に現れる……その名も!!」
ガラッ
竜樹はふすまを勝手に開けた。
「ほのか、このジジイは、俺とこの家に住んでいる、通称『じっちゃん』だ」
じっちゃんは妙なポーズをキメている。
「……そうですか」
苦笑する焔火。
「竜樹、人のセリフを取っては駄目だとあれほど教えたじゃろうに……」
その場に体育座り込んで落ち込むじっちゃん。
「断じて教わってねえ」
あくまで高圧的な竜樹。
「竜樹君……お年よりは大切にしないとだめです」
「そうじゃぞ、竜樹」
「いやいや、大切にされる余地のあるお年よりはバック宙なんてできないから」
「え!?できるんですか!?」
素直に驚く焔火。
「まあのう。ほっ、はあッ!!」
見事にバック宙をキメるじっちゃん。
「わ、凄いです!!」
「そうじゃろうそうじゃろう」
得意気なじっちゃん。
「こんなのまだ常識の範囲で、じっちゃんは逆立ちで学校まで行けるんだぜ」
なぜか竜樹も得意気に言った。
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