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『……少年』
「……何だよ」
黒竜の輪郭が薄れていく。
『契約者である**が死んだ今、私もすぐに消える……だが、1つだけ言っておきたいことがある……』
少年は返事をしない。
『戦いに生き残ったお前は、神に願いを叶えてもらうことができる……だが、少年が**のことを想っているなら、次に私の言う願いだけは頼まないで欲しい』
少年は返事をしない。
『1つは、**を生き返らせることだ。
**はこの世界に生きることを望んでいなかった』
少年は返事をしない。
『2つ目は、この世界を破壊することだ。
少年が**の思いを無下にしてまでして救った世界だ。無駄にするな』
少年は返事をしない。
『以上……だ……』
そう言うと、黒竜は消えた。
文字通りの消滅である。
『おめでとう』
黒竜が消えるとすぐ、天から強大な気配が降りてきた。
少年は直感で、それを神だと思った。
いや、確信した。
神は光に包まれていて、その姿を見ることはできない。
そして神が地面に降り立つと、光は拡散し、辺りを真っ白に染めた。
すぐに光は消え、少年の目の前に神の姿があらわになる。
その姿は、まさにドラゴンだった。
白銀に輝くその体は、普通のドラゴンとは違う点が1つある。
翼が、多い。
肩に左右2枚ずつ。
首に左右1枚ずつ。
頬に左右1枚ずつ。
背中に左右1枚ずつ。
尻尾の先に左右1枚ずつ。
手足に各1枚ずつ。
合計で16枚の翼があった。
『やあ、よく頑張ったね』
神はテレパシーを使い、少年に語りかける。
なぜか子供っぽい口調が不釣り合いだ。
『願いを1つ、叶えよう』
少年は目を伏せたまま口を開く。
俺は……
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