知り合い未満

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 高校生にもなると、それなりに忙しい。  滝川 望(たきがわのぞみ)もそんな高校生の一人だ。  望は家から、自転車て15分の所にある自由な校風と歌っているが、それ以外の特長もない高校に通い、放課後は大手フランチャイズのハンバーガーショップで、バイトとして働いている。  今日もバイト先でそれほど時給も良いわけではないのに、こきつかわれて、ヘトヘトになって帰宅してきた。  なんのへんてつのない男子高校生の望だが、一つだけ人には言えない趣味を持っていた。 「姉貴、今日って確か雑誌の発売日だったよな?」  自分の部屋に学ランの上着とカバンを投げ入れ、部屋には一歩も入らず、その足で隣の部屋に踏み入れる。  今大学ニ年の姉が使っている部屋だ。 「ノックをしてっていつも言ってるじゃない!!」  かん高い声とともに、ハート形のクッションが飛んでくる。  それを難なく受け止め、 「ごめんごめん。…それより雑誌は?」 「……これよ」  姉の和夏(のどか)はベッドの横に積み重ねられている本の、一番上に積まれていたA5サイズの分厚い雑誌を望になげわたす。 「サンキュ」  目的は果たしたとばかりに足早に部屋をでる望にまたかん高い声がかかる。 「それも半分あんたもちだからね」 「わかってるよ! 後でな~」  ほんとうかしら? といぶかしげな声が聞こえてきたが、望はソレを無視して、部屋のドアを閉める。 「続きが気になってたんだよな~」  そう言いながら開いた雑誌の表紙は、少年が読む物にしては変わっていた。  慣れた手つきで、巻末にある目次を開き、目的のページを探すと、迷わずそのページを開く。  そのページのタイトルは… 『砂漠の夜に抱かれて 下巻』  挿絵では、アラビアンな服装を纏った体格の良い男性とスーツにメガネをかけたエリート風の男性が抱き合っている。  世の中で言うところの、ボーイズラブ小説。  正にそれだった。
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