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『母さん、起きてる?』息子からの✉で、目を覚ました私。
あっそうだ。私、独りだったんだ。昨日、ここに引っ越したんだっけ。低血圧の私を、いつも起こしてくれた息子は、📱の✉でその役目を果たしてくれていた。
私、秋山実子(みこ)。この秋に40歳になる女盛りのおばちゃん。昨日、離婚して独り暮らしを始めたばかり。第2の人生を古ぼけたアパートで迎えた。
『もしもし、いま起きたよ』
『メールで返事すりゃあ、いいじゃん。電話代勿体ないだろう』
『あっそうか。まあいいじゃん、掛けちゃったんだから…』
『しょうがねえなぁ。今日は、休みだろ。片付け終わるんか?』
『何とかなるよ。手伝う?』
『俺、大学あるんだよなぁ。夕方行くよ。すき焼き食いてえな』
『分かった。待ってるよ。じゃあね』
『ふんじゃあ』
息子は、大学の寮に住んでいる。もう二十歳になり、自分の生活があるから、私とは一緒に暮らさないらしい。
旦那、いや元旦那とは、私が19歳の時に結婚した。丁度、20年目の破局は突然の事だった。突然現れた、若い女の大きなお腹を見て、こんな結果になっちゃった。まさか、堅物の旦那が若い女を妊娠させるなんて考えてもいなかったなぁ。仕方ないかぁ。私も仕事ばかりで、夫婦らしくなかったし、体なんて触れ合う事も暫くなかったもんね。
さあ、ご飯食べて片付けちゃおう。夕飯は、すき焼きね。買い物も行かなきゃ。忙しい、忙しい。
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