死後

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その光景を見て、ヒツギは下等な生物を憐れむように微笑した。 「ふふふっ」 「残念ですが、私に触れる事はできませんよ、私とあなたでは次元が違うのですよ、私からあなたに触れる事は出来ても逆はかなわない」 そんな言葉は、哲男の耳に入らないようだった。 「ちくしょう! ちくしょう! なんでっ…だッ…よ…地獄になんかッ…嫌だ…ちくしょう!」 涙と鼻水にまみれて醜い顔になろうと、叫ぶのをやめなかった。 「ふふっ」 「まったく本当に、ふふふっ…酷い顔ですねぇ。 ふふっ…あなたという人は、ふふふっ、はぁ…私とした事がまた笑ってしまいました」 呼吸を整えた後、今度は真面目な顔で話し始めた。 「誰も地獄に連れて行くなんて一言も言っていないのに、勝手に勘違いしないでください」 その言葉に哲男は食いついた。 「本当か!? 冗談じゃないよな!? 俺は地獄に行かないでいいんだな?」 まだ信じられない哲男は、興奮気味にそう言う。 「ふふふっ」 「まったく…だからそう言っているじゃないですか」 ヒツギは本当におかしそうに笑った。 助かった… 「…そうか…よかった…」 涙と鼻水まじりの声で、そう答えた。 「まぁ天国とか地獄とか…そんなものは存在しませんけど」
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