1563人が本棚に入れています
本棚に追加
その光景を見て、ヒツギは下等な生物を憐れむように微笑した。
「ふふふっ」
「残念ですが、私に触れる事はできませんよ、私とあなたでは次元が違うのですよ、私からあなたに触れる事は出来ても逆はかなわない」
そんな言葉は、哲男の耳に入らないようだった。
「ちくしょう!
ちくしょう!
なんでっ…だッ…よ…地獄になんかッ…嫌だ…ちくしょう!」
涙と鼻水にまみれて醜い顔になろうと、叫ぶのをやめなかった。
「ふふっ」
「まったく本当に、ふふふっ…酷い顔ですねぇ。
ふふっ…あなたという人は、ふふふっ、はぁ…私とした事がまた笑ってしまいました」
呼吸を整えた後、今度は真面目な顔で話し始めた。
「誰も地獄に連れて行くなんて一言も言っていないのに、勝手に勘違いしないでください」
その言葉に哲男は食いついた。
「本当か!?
冗談じゃないよな!?
俺は地獄に行かないでいいんだな?」
まだ信じられない哲男は、興奮気味にそう言う。
「ふふふっ」
「まったく…だからそう言っているじゃないですか」
ヒツギは本当におかしそうに笑った。
助かった…
「…そうか…よかった…」
涙と鼻水まじりの声で、そう答えた。
「まぁ天国とか地獄とか…そんなものは存在しませんけど」
最初のコメントを投稿しよう!