死後

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なるほど… ヒツギはようやく哲男が何をしようとしているのか理解した… 哲男さん…本当に…素晴らしい…素晴らしいという言葉では称賛しきれないほどに… 哲男の考えは単純だった… 普通に窒息しようとすれば、どうしても途中で苦しくなりやめてしまう…それならば途中でやめることが出来なくすればいい…そう…溺れればいい…しかしバスタブの大きさではどうあがいても溺れることは不可能…そこで哲男は包丁で自分の両手両足…四肢をもぐことによって、溺れる状況をつくりあげようとしているのだ… こんな馬鹿げた考え…思いついても実行できるものなのか… だが…実際に哲男は実行している… 右足を切断したら、休むことなく左足の切断にとりかかる… 死から逃れる為に… 死ぬ… 人間が必死にもがく様はなんと美しいのだろう ヒツギは黙って哲男を見守った
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