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今まで誰もいなかったはずの後ろを振り向くと、その女はいた。
黒のスーツ姿にサラッと腰まで伸びた黒髪。
173センチの男の身長をゆうに超えるほどの高身長。
180は超えているだろう。
そして銀縁眼鏡の奥から吸い込まれる程に美しい瞳で、男を見つめていた。
「なんだお前ッ!?」
男の質問など知らんぷりに、女はぶつぶつとしゃべり出した。
「はぁ~…本当になんでここ最近こんなに忙しいのでしょう。
あなたで180人目ですよ、まったく、本当に疲れます。
たまにはゆっくり温泉にでも行きたいのに…
当分無理そうですし…
はぁっ…」
突拍子もなく意味不明な愚痴をこぼすので、男は面をくらってしまった。
「てめぇ!俺はお前はなんだって質問してるんだ!無視すんな!」
さすがにここで相手のペースに流されてしまうような、しおらしい性格ではなかった。
「あぁ、すいません。
まぁ一応礼儀…というかルールみたいなものですので。
私自身忘れてしまいそうになるんですよ。
気にしないでください。
一応挨拶をさせていただきます。
わたくし、殺人者担当の死神、
“ヒツギ”
と申します。
死神仲間の間では
“殺人者の棺”
と呼ばれております。
以後お見知りおきを」
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