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事の始まりは私達が中学三年の夏。
私達はいつも仲の良い四人で行動していた。
藍(あい)悟(さとる)春樹(はるき)そして私。
小学生の頃に仲良くなった私達はそれからも常に一緒だった。
それは中学に上がっても変わることなく。
この時期、思春期という壁に阻まれて関係を壊す人もいるだろう、しかし私達にそれはない。
中学最後の夏休み、いつもの様に四人は集まり春樹の家で宿題に取り組んでいた。
頭の良い春樹がいると宿題も捗る。
受験を控えている私達には心強い親友だ。
そんな時、藍が口にしたのはこんな事だった。
「ねえ、あたし達ってずっと友達だよね?」
「何言ってんの、藍?」
悟は不思議そうに藍を見た。
勉強に集中していた春樹も私も手を止めて藍を見た。
「もしこの四人の中で誰かが誰かを好きになって、付き合ったりしたらこの関係って終わっちゃうのかなぁ…って思ったの…」
「そんなの、ありえないだろ」
春樹は自信たっぷりに言い返す。
胸が痛む。
少なくとも私と春樹が付き合う事はないんだ…。
「じゃあさ、付き合わなければいいんじゃん?決めようよ、俺ら四人は何があっても絶対に付き合わないって」
悟は当たり前の様に言う。
みんな笑いながらそれに納得する。
勿論、私も。
この想いは決して伝えてはならない。
心の中だけで押し殺さなければならない。
そう覚悟を決めた十五の夏。
それから二年後、私達は高校二年生。
みんな随分、成長した。
悟も春樹も背は伸び、体つきもしっかりとして"男の人"になり、藍も私も"女の人"の体になった。
相変わらず仲は良くうまくやっていける筈だった。
あの約束があったから。
しかしその年、藍と春樹は付き合った。
その事実を知ったのはそれから半年も後の事だった。
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