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左から春樹、藍、直樹、飛鳥、そして一番右が悟。
藍と春樹は別世界。
それをよそに三人は話をしていた。
いつの間にか列は真ん中辺りまで進んでいた。
朝方だけあって、昼間よりも寒い。
時間が立つにつれ空気の冷たさは肌に突き刺さる様だ。
特に顔や耳など露出されている部分は千切れる様に痛い。
まだまだ順番が来るのは先。
そこで直樹は何か飲み物を買ってくる、と言い、列から離れた。
飛鳥も一緒に行くと言うと直樹に止められた。
「すぐ戻るしすごい人だから待ってなよ。適当に買ってくるからさ」
「……うん」
直樹は人ごみをかき分ける様にして離れていく。
その姿はすぐに見えなくなった。
残された飛鳥に悟は話し掛けてきた。
「飛鳥、やっぱりピンク似合うね」
悟はマフラーを見て微笑んだ。
それはクリスマスに悟と春樹から貰った物。
「うん。ありがと。あったかいよ?」
飛鳥も自然と微笑んでいた。
すると悟は春樹達の方をちらっと流し見た。
「あ~あ。飛鳥、どう思う?あれ」
飛鳥も少しだけ春樹の方を伺う。
「…いいんじゃないの?藍は春樹にべったりだし、春樹も満更でもなさそうだし?」
その飛鳥の言葉に悟は微妙な顔をした。
「そうかなぁ。俺さ、ぶっちゃけ最近の藍はちょっと苦手」
それには飛鳥も驚いた。
悟の口からそんな言葉を聞くとは思わなかった。
いつも四人を上手く纏めてくれる悟がそんな事を思っていたなんて…。
飛鳥はこれからの自分達に危機感を覚えた。
……あたしだって…最近の藍は苦手。
でもそれは自分が言ってはいけない事だと思っている。
春樹を想う自分がそれを口にするのは明らかに嫉妬の様な汚い感情からだと思うから。
「めずらしいね、悟がそんな事言うなんて。あたしは今の藍は素直だと思うよ?」
「…偉いね、飛鳥は。でもこれ以上藍が素直になってもねぇ、今までだって十分素直だし」
悟は笑った。
…確かにね。
飛鳥も可笑しくなった。
その通りだと思ったから。
それから少しして直樹は戻ってきた。
列の近くまで来ると、直樹が帰ってきた事はすぐに解った。
しかし隣には誰かがいる様だった。
列に戻る前にその相手と別れ、また、人をかき分けてやってくる。
飛鳥は確かに見た。
直樹は飛鳥の知らない女の人と居た事を。
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