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ホームルームが終わると、春樹は藍がやって来ない事を不信に思った。
いつもならばすぐに藍がやって来る。
そして四人で帰る。
帰ると言っても自分には藍が始終くっついているので二人で帰っている様なものだけれど。
少しすると悟がやってくる。
「よっ、春樹。今日は藍いないのか?」
悟は周りをくるくると見渡す。
春樹も周りを伺うが藍の姿がない。
そのまま飛鳥を探す。
しかし飛鳥の姿までもがそこには見当たらなかった。
「あれ、飛鳥もいないじゃん…」
悟は少しだけ不安そうな感じになる。
そのまま春樹が無言でいると悟に尋ねられた。
「春樹、何か聞いてる?」
「…いや…」
悟は更に神妙な面持ちになる。
「……これは…何かマズイ事じゃなくて…?」
春樹は何も答えない。
…まだ大丈夫だと思う…。
でも…もし何かあったら…。
既に二人の鞄が無かった事から帰ったのだと解る。
「悟、帰るぞ」
「あっ…、うん」
春樹は不安になりながら急いで悟と教室を出た。
足早に歩くその道では二人を見つける事は出来なかった。
段々と春樹の不安は募っていく。
するとそんな春樹の気持ちを読み取っているかの様に悟が明るい声色で話し掛けてきた。
「春樹、たまにはどっか行かね?
ほら、最近藍とばっかりだっただろ?
寂しいんだよね、俺」
春樹はきっと大丈夫だと言い聞かせると、悟の気遣いを汲んで返事をした。
「…ああ、じゃあ行くか」
そして春樹は久しぶりに悟と放課後を共にした。
ゲームセンターに到着した時、春樹の電話が着信を知らせた。
ポケットからそれを取り出すと画面を開く。
相手は藍だった。
(もしもし~?春樹?
ごめんね、今日。
飛鳥とかえっちゃったぁ。
だから心配しないでね~)
「何でだ?」
(やだな~。友達と帰っただけで理由なんかなくたっていいじゃん。
そんなに心配しなくたって何もしてないわよ、じゃあね)
そして電話は切られた。
プープー…と機械の音だけが響く。
「藍?」
悟の声で我に返る。
「…あ、ああ。やっぱり帰ったみたいだよ」
「…大丈夫なの?」
「…たぶん」
自分の見えない所で何が行われているか解らない。
春樹は益々藍から目が離せなくなった。
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