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あれは夏休み。
高校三年、最後の夏休みだ。
長い休みにいい思い出がない…。
飛鳥はリビングでごろごろと寝転がり、テレビに目を向けていた。
面白くはないが一人の夜には音がないと寂しくなる。
両親は共働きで帰りが遅い為、夕食も一人で済ませる。
味気ない。
そこに突然携帯の着信音が鳴り響く。
それは悟からだった。
「もしもし?どうしたの?」
(あ~、飛鳥?今外なんだけどさ、ちょっと話せる?)
「いいけど…何かあった?」
(大した事じゃないんだけどね)
「あっ、そう。じゃぁ今から行くよ。どこ?」
指定されたのは近くの公園。
飛鳥は電話を切るとお財布と携帯だけ持ち、そのまま家を出た。
家からその公園までは五分とかからない。
地元同士の友達である四人は家も近く、会おうと思えば物の数分で会うことができる。
そこにはベンチに座る悟の姿があった。
飛鳥を見つけると立ち上がった。
「いいよ、あたしも座る」
悟を座らせ、飛鳥も隣に腰掛ける。
「で?どした?」
「うん…あのさ…」
悟はとても言いづらそうにしている。
「なによ、変なの」
「実はね、春樹に聞いたんだけど…飛鳥は知らないって言うから…。俺ら友達じゃん?俺隠せなくて…」
…えっ?何の話?
飛鳥の頭には疑問符しか浮かばない。
「春樹と藍、付き合ってるんだって…」
………は?
飛鳥には理解できなかった。
「えっ…………いつから?」
「半年くらい前から」
「何で何も言ってくれなかったのよ」
悟を責めても仕方がないのは分かっている。
しかし出てくる言葉はそれしかない。
「俺だってびっくりだよ」
約束はどうなったの?あの日、みんなでした約束は?
「みんなで会う事、少なくなるかな……?」
私がそういうと悟は笑って答えた。
「まさか。…でも、もしそうなったとしても…俺と飛鳥は変わらないでしょ?」
「……うん」
精一杯笑って答えた。
悟にどう映っていたかはわからないけれど。
夜だというのにとても蒸し暑く、蝉の鳴き声もちらほら聞こえている。
街灯には明かりを目指してたくさんの虫達が集まる。
飛鳥はそれを見ながら夏を感じていた。
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