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家の前に着いた時、直樹は飛鳥の頬を両手で包んだ。
「何があったかわかんないけどさ、辛くなったら何でも言っていいからな?どうせ飛鳥ちゃん、春樹達には言えなくて悩んでるんだろ?俺は女の子の見方だからさ」
そう言って笑った顔は春樹にそっくりだった。
正確に言えば春樹が直樹に似ているのだろうけど。
飛鳥は止まった涙がまたこみ上げてくるのを感じた。
そのまま直樹の手の中に涙を流した。
流石にいきなり泣き出した飛鳥を見て戸惑っている様だったが、すぐに自分のシャツの裾で飛鳥の涙を拭いた。
「おっ、おい。泣くなって。」
それでも涙は余計に溢れるばかり。
自分でも止めるのは不可能だ。
直樹はそんな飛鳥を見て自分の胸に引き寄せた。
ぎゅっと強く抱きしめられていた。
春樹と同じ匂い…
飛鳥は直樹に抱きついた。
その手にぎゅっと力を込めて。
どのくらいそうしていたのか、気づくと直樹のシャツは飛鳥の涙でびっしょりになっていた。
飛鳥はひとしきり泣くと、それに気付いて慌てて直樹から離れた。
「あっ……ごめんなさいっ……シャツ………」
「ああ、いいよいいよ、こんなの」
直樹はまた笑顔になる。
そして少し間を置いてから直樹が言った事。
「飛鳥ちゃん、俺と付き合って?」
「…………えっ?」
「飛鳥ちゃんは春樹を好きなままでいい。だから契約して。俺と。期間は飛鳥ちゃんが春樹を忘れるまででいい。それまで俺のものになって。そうすれば飛鳥ちゃん、春樹のそばにいられるでしょ?」
「でも…それじゃあ………」
自分でも何を言おうとしたのか解らなかった。
「不満?」
「いや…でも直樹さんは…」
「嫌じゃないなら決まり。俺の事は直樹って呼んでよ。飛鳥…」
この日から私は直樹のものになった。
でも心は春樹、あなたに捧げたの。
私のしている事は理解できないかもしれない。
だけどこれがあなたを失わない為に私ができる事。
そうね、私の愛は歪んでいるかもしれない。
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