事件と少女と青年と①

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それが『偏食』である。血は人によって成分に差異があるため、無差別に吸ってばかりいると、バランスが崩れてしまうのだ。それを無視すると、やがて自我を無くし、ひたすら血を求め続ける『暴走』が始まる。 こうなってしまえば、喉の乾きは例外を除いて、まず癒されることはなく、自分の意思で吸血衝動を抑えることもできずに、やがて死に至る。 しかしながら、血の成分など飲んで初めてわかることだ。度々人の前に姿を現して、片っ端から味見をしていては効率が悪いし、世間を騒がせてしまう。 『登下校中は、不審者と吸血鬼に気をつけましょう』などという扱いを受けるのも、彼らにとっては心外であろう。それは人が家畜を殺して食べるのと、何ら変わりはないのだから。 では、どのようにして効率よく、目立たぬようにして血を吸うのか。そこで彼らは画期的な方法を考えた。
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