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「ふぇ、ふぇ、ふぇ、ふぇっくしょい!!」
人気のない裏路地に、マヌケなくしゃみが響き渡る。
辺りがすっかり暗闇になった頃。今日は晴れていたお陰で、上空には、満天の星空が広がっている。
時々吹く澄んだ夜風は、夜の街を歩く青年を凍えさせるのに十分なほど冷たい。
「う~、さむぃ。流石に夜は冷えるなぁ。」
そう言って体をさすりながら、彼は歩いていた。当てがあるわけでも、目的があるわけでもない。ただ気の向くままに歩いている。そんな感じである。
彼の目は、その姿を包む暗闇とは対照的に赤く輝いており、髪もまた、少し明るめの赤『朱色』をしている。
『ド派手』
その一言で、彼の風貌が語れると言っても、過言ではない。
彼はまだ、散歩を終える気はないようで、歩みを止めることなく、次の角を左へ曲がった。
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