22人が本棚に入れています
本棚に追加
「い・・・っ!!」
あまりの痛さに、後ろで仁王立ちする奈津をきっと睨みつける。
すると、すぐさま威張ったように息を吐いてこちらを見下した。
「りっちゃんがあたしを子供扱いするから!・・・んもー、ハルちゃんは優しいのにぃ」
ハルちゃん・という名前を聞いて、奈津を睨みつけていた目線を床に移す。
落ちた鞄の持ち手をぐっと掴み、目線を動かさないまま床に手をついて起き上がった。
不愉快の原因は、どうやら本当に鈍いらしい。
「・・・・・佐倉と俺は違う人間。一緒にしたら可哀相だ」
「・・・」
歩き出した自分を追って、一歩遅い足音がする。
それと一緒に、深く息を吐く音もした。
「───・・律が、かわいそう」
か細い美声は突然吹いた風にかき消されて、耳には届いてこなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!