金曜日

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「い・・・っ!!」   あまりの痛さに、後ろで仁王立ちする奈津をきっと睨みつける。   すると、すぐさま威張ったように息を吐いてこちらを見下した。   「りっちゃんがあたしを子供扱いするから!・・・んもー、ハルちゃんは優しいのにぃ」   ハルちゃん・という名前を聞いて、奈津を睨みつけていた目線を床に移す。   落ちた鞄の持ち手をぐっと掴み、目線を動かさないまま床に手をついて起き上がった。   不愉快の原因は、どうやら本当に鈍いらしい。   「・・・・・佐倉と俺は違う人間。一緒にしたら可哀相だ」   「・・・」   歩き出した自分を追って、一歩遅い足音がする。   それと一緒に、深く息を吐く音もした。     「───・・律が、かわいそう」     か細い美声は突然吹いた風にかき消されて、耳には届いてこなかった。             .
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