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ひとしきり笑い終えると、霊は笑いすぎてこぼれた涙を指で拭って言った。
『楽しかったよ』
「ん?……そうか…」
人間もそれに答える。
ただ、言葉にこもる感情はほっとしたような寂しさが混じっていた。
「はい、これ…………大事なんでしょ?」
霊は人間に何か手渡した。
小さい古ぼけた銀のロケット。
チャリと鎖が鳴って、鈍く光る。
「あぁ……、大切なものだ」
『失さないようにね』
「とった奴が言うな」
皮肉げに呟く。
『ふふっ、それもそうだね』
霊はばつが悪そうな笑顔を見せた。
きりっと胸が締め付けられるような痛みがした。
それは心の痛みだろうか。
イカセタクナイ
…
いかせたくない
…
逝かせたくない
そんな思いを遮るように霊は月を背にこちらを振り返った。
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