ソレ

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    「なぁ、……いい加減返せよ」   誰もいない真夜中のプールに声だけが虚しく響く。   「なぁ…」 否、いないわけではなかった。 誰もいないはずのプールサイドのベンチに、黒いジャケットをはおって夜と同化している一人の人間。 それが何もない空間に話しかけている。 「オレは別に何もしてないだろ?」     『………………そ………………で……』 突然、弱々しい声が返事をした。  
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