一人目のお客様

5/31
前へ
/114ページ
次へ
そう、一言で言うならば、春の日だまりのような人。 ポカポカしてるんだけど、暑すぎない。まどろむのに丁度良い感じの。 ―癒されるなぁ。 そう思いながら、ずっとマスターの方を見ていた。 するとマスターが自分から話し始めた。 「この店にはメニューは一切ございません。お好きなものを言っていただければ、なんでもお出しいたします。」 「あっ、そうなんですか!じゃあ紅茶を。」 「かしこまりました。どのような種類がお好みですか?」 「ダージリンで。」 「はい。」 そう言うと、奥にある紅茶の缶から、お茶の葉を出してティーバックをつくり、それをティーポットに入れて熱いお湯を注いだ。 熱いお湯であればある程、紅茶は色も香りも良くなる。 お茶が出来るのを待つ間、カップにお湯をかけて、温めてくれている。 ―こんなにちゃんと入れられた紅茶を飲むのは久しぶりだな。 俺はなんとなく嬉しくなってきた。俺の家ではよく家族全員で紅茶を飲んだものだった。 おいしいお茶菓子と一緒に。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2357人が本棚に入れています
本棚に追加