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赤と黒
街灯ですら無い月明かりが頼りなだけの、人気の無い路地裏
赤いリボンを首でくくり、長い尾を揺らしながら軽快な足どりでそこを歩く優雅な黒い仔猫が一匹。
それと
「ほらほら、駄目ですよ。」
不意に、ヒョイッとそれは軽々しく持ち上げられた
「あまり離れないで下さいね。フェンリルさん」
猫の前足の両脇を掴み、持ち上げるのは物腰柔らかなふいんきで深紅の長髪の少年。
魔女の帽子のような、先端がうねりながら尖っているつば付きの黒い帽子に、裾をだした白いワイシャツ、黒いズボンに隠れたブーツ
首からさがる黒生地に白いラインの入った足の長いリボン、なんとも特徴的な格好だ。
少年はフェンリルと呼んだ仔猫を自分の肩に抱き上げると魔女帽子を深く被り直して路地をまっすぐに進む。
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