序:章題 ~終末から鳴り響くファンファーレ~

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序:章題 ~終末から鳴り響くファンファーレ~

 最早、それ以前を知ることは叶わない。  長く続いた戦火は、大地を抉り、山をも潰し、海すらも吹き飛ばし、形の有無に関わらず、全てのものを焼き尽くして、破壊してしまったのだ。  ありとあらゆる災厄、天変地異が巻き起こった。地球からは、美しかった青が消えた。茂る緑が消えた。  夜を照らす光が消え、網の目のように蔓延っていた社会そのものが、跡形も無く消失してしまったのだ。  劣悪な環境の中、生き延びた人々は、途方に暮れ、無へと帰された世界で、生きる他無かった。  世の常として、互いに集まり、共同体を形成し、助け合うことを旨として。  小さく疎らに点在していた共同体は、やがて変化を遂げる。  より良い安全な暮らしを求め、複数が併合し、1つの巨大な連合集団を作る共同体が、現れたのだ。  しかし、それら連合の狭間にあったのは、支配か、服従。秩序が忘れられた、生まれ変わってしまったとも言える新しき世界で、言葉という手段は、役に立たぬ代物に、成り下がっていたのだ。  人々は、数少ない生活の場を、争うことで、獲得していたのだった。     ――いつ、いかなる時代に於いても、それすらが世の常だった。  人々は、皆いずれかの共同体に属し、先の分からぬ日々を、送っていた。  ――フレデリック・マーキン著:『背後にある影』より引用。
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