Case.1

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砂埃舞う荒れ果てた大地を霧が包んでいる。 空も、一寸先も見えない。 しかし進む方向はわかっている。 何故か、と問うまでもない。 それは定義された道だから、なのだろう。 上着は遥か昔に風に飛ばされた。 ズボンの裾はすりきれ、埃にまみれている。 靴は摺へり、穴が空きそうだ。 一体どのくらいの間歩み続けているのだろうか 「よーう、そこ行くお兄さん?」 突然虚空に響いた軽い調子の若い男の声。 どうせお仲間だろう。 そのまま振り返りもせず、歩み続ける。 「ちょっ、おいっ!」 良くもそんな元気があるものだ。 自分は疲れはて、声も出ないというのに。 此処に来てまだ日が短いのだろう。 見知らぬ者に関わっていれば、道の終りに行き着くのが遅くなってしまう。 それだけは、絶対に、避けねばならない。 焼けつくような焦燥感。 それだけは受け入れられない強迫観念。 面倒な人物に関わる時間など、無い。 「危ねぇって!」
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