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砂埃舞う荒れ果てた大地を霧が包んでいる。
空も、一寸先も見えない。
しかし進む方向はわかっている。
何故か、と問うまでもない。
それは定義された道だから、なのだろう。
上着は遥か昔に風に飛ばされた。
ズボンの裾はすりきれ、埃にまみれている。
靴は摺へり、穴が空きそうだ。
一体どのくらいの間歩み続けているのだろうか
「よーう、そこ行くお兄さん?」
突然虚空に響いた軽い調子の若い男の声。
どうせお仲間だろう。
そのまま振り返りもせず、歩み続ける。
「ちょっ、おいっ!」
良くもそんな元気があるものだ。
自分は疲れはて、声も出ないというのに。
此処に来てまだ日が短いのだろう。
見知らぬ者に関わっていれば、道の終りに行き着くのが遅くなってしまう。
それだけは、絶対に、避けねばならない。
焼けつくような焦燥感。
それだけは受け入れられない強迫観念。
面倒な人物に関わる時間など、無い。
「危ねぇって!」
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