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結局、葬式が終わっても司は帰って来なかった。
すっかり夕日が空を染め上げ、衛は一人だけ先に家に帰る。
両親は夜まで司の家にいるらしく、今家に居るのは衛だけ。
勉強机にタンスにベット。
今時の若者にしては殺風景な部屋で、唯一女の子らしい持ち物と言えば机の上にあるクマのぬいぐるみくらい。
シーツを敷いたベットにコテンと倒れて天井を見上げる。
窓から差し込む夕日の色が嫌に恐く感じてカーテンを閉め、心の中では帰って来なかった司の事が心配になっていた。
まさか消えたとか?
葬式が終われば、人の魂は成仏してしまうのか?
「そんなの…許さないから…」
いつの間にか瞳に涙が溜まり、ボソリと呟いた言葉は瞬く間に消えて。
「どうかした?」
壁から顔だけを出している司を見て吹き出した。
「ああああああんたっ! え、えええええっ!?」
突如横の壁に人の顔が出てきたのだ。
驚かない人がいるなら見てみたい。
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