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「馬鹿って言われてもなぁ」
「馬鹿馬鹿馬鹿っ! 司なんかば……か……」
最初は不意に聞こえた声に反応を示す気すらなかったが、凄く聞き覚えのある声に、ハッと声が詰まる。
「おいっ! お前俺が死んだからって、いくらなんでも酷くねぇか!?」
声は明らかに後ろから飛んで来ていて、それでもあり得ないはずの声に無意識のうちに耳を塞ぐ。
あり得るはずがない。
だって、アイツはもういないんだから……。
それでも声がしたほうに気配を感じ、ゆっくりと視線を後ろへと向ける。
「大体なんで泣いてくんないの!? 寂しくて枕元に立つぞ……って、ん?」
視線があった瞬間、男はキョトンとした表情を浮かべて衛を見てくる。
衛は耳を塞いでた手が力無く腰の横に落ちていくのを感じながら、口が開いたまま閉じなくなった。
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