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声にならない叫びがお腹の奥へと帰っていく。
だけどあり得ない光景は衛の思考をストップさせる。
男は後ろを振り返ってみたが、自分以外に誰も居ないことに気づく。
それからゆっくりと衛の前で手を上下させてみれば、衛の眼球はその手につられて上下に動いた。
「あれ? もしかして見えちゃってる?」
男が意気揚々と尋ねてきた質問に、やっと思考が動き出した。
言葉は相変わらず胸の奥に引き込もっているため、代わりに何度か頭を縦に振る。
「マジで!? さっすが衛、愛されてんな俺!」
そう言いながら男は衛に抱きついてきて、大きな両手を背中に回される。
確かにそこにある感触を確かめながら、衛の言葉がやっと口へと姿を現した。
「司!?」
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