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「どこ行くん?」
「屋上」
「5時限は?」
「サボる」
素気なく返事をすると、俺は教室を横切る。
もちろん、屋上になんか行く気はない。
次の授業を受けるより、図書館で本を読んでた方がマシ。
次は国語。
5時限目の国語の授業なんて、眠くなるだけ。
ドンッ!
「わきゃっ!」
開け放たれているドアを出たら、誰かとぶつかった。
相手は女子らしく、俺は一歩下がるだけだったけど、相手は尻もちをついている。
「わりぃ」
「いえ、ごめんなさ…」
顔を上げた彼女は言葉途中で止めた。
そして、すぐ俺を睨みつけてくる。
そう、ぶつかった相手は東郷だ。
この関係も、何年も変わっていない。
俺は心の中で深くため息をついた。
次に来るセリフはわかっていたから。
「なんであんたに謝らなきゃいけないのよ!」
なんとも予想通りのセリフ。
もう、なんか罵られるのも疲れた。
「信じらんない!」
とりあえず、悪態をつく彼女の手を引っ張り立たせると、俺は何も言わずにその場をあとにした。
東郷への気持ちが冷めてる気がした。
いくら好きでも、相手には毛嫌いされてる。
それなら、俺を好きだと言ってくる他の女の方がいいのかもしれない。
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