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失くしたくないからと、
ただその一心で両手を伸ばした
けれど、
笑いたくなるほど呆気なく、
それはこの指先をすり抜けて、
無機質な音を立てて砕け散った
砕け散ったそれを見詰めて、
ただ僕は泣き喚いた
「愛してるよ」と、
それは微笑んでそして
「一緒に居るよ」と、
泣く俺の頭を撫でてそう言ってくれた
だからこそ、
だからこそ失くしたくないと想ったのに
大切なモノを護れないのなら、
何故世界は力をくれたのか
何故世界は、
自分をこの世界に喚んだのか
紅く染まった涙の水底で、
ただただ、
自分の無力さを呪い続ける
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