プロローグ

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紅蓮の炎に包まれた座敷の広間。 広間の中心に、傷ついた左目を押さえて自分の無力さを嘆いてる忍装束の少年が倒れている。 少年の右目に映るのは、赤い鎧武者と綺麗な着物を着た美しい女性。 「ゆ・ゆう様、今、修矢が、参りますから・・・。」少年は手で押さえているが、余りにも深く大きな傷から血が溢れている・・・しかし、そんな事を今は言ってられない。 少年はゆっくり這いつくばりながら、広間の中心から角にいる赤い鎧武者の後ろ姿へ進んでいく。 赤い鎧武者は右手に持っていた真っ赤に染まっている刀を両手で掴み、上に掲げた。 その姿を少年は、ほとんど進めないでいた場所から眺めている。 「ご覚悟。」野太い赤い鎧武者の声の先にいるのは、美しい女性。 「やめろ~。」 少年の叫び声と共に振り下ろされた刀・・・鎧武者の足の間から美しい女性が崩れ落ちたのが、少年の瞳に映った。 「ゆ・ゆう様・・・?うわぁ~・・・。」 少年の絶望に満ちた叫び声が燃え盛る城に響いた。
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