夜を終らせる者(その壱)

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笠を被り、袈裟を着た長い髪の男が両端を田に挟まれた畔道を歩いている。 前から来る農民の老人が頭を軽く下げ、顔を上げた。 「ひゃあ!」 老人は声を上げ、その場に尻餅をついた。 そんな老人に頭を下げて、男はその場を後にした。 「今日は風が気持ちいい・・・。」 男は笠を軽く上げ、トンビが気持ち良さそうに飛んでいる澄みきった青空を見上げて呟いた。 大きな傷をした左目ではない右目で。
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