響き合う心は誰のもとへ

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「待たせたね。」 黒いスーツを見事に着こなしたオールバックの30歳くらいの男がそう言いながら入って来た。 「君の事は多少調べさせてもらったよ。」 俺は大分落ち着いていた。 だが頭が重い。深い疲労のように全身が動くの拒否していた。 「月影 正樹(ツキカゲ マサキ)。17歳。両親は幼い頃に他界。母方の祖父母に育てられるが高校に入学後祖父が他界。祖母も後を追うように半年後に他界。親戚が引き取りを申し出たが独りで生活を始める。」 あっている。普通なら関心の一言でも出す所だが、とてもそんな気分ではない。 「我々は極秘機関、通称『木の根』。これから君には信じ難い事実を聞いてもらうが無理に理解しなくていい。じきに実感する事になる。」 俺はうなだれたまま静かに聞いた。 「我々人類は未知の生物との戦いを繰り返している。もう百年以上…いや、さらに昔から続いていたのかも知れない。それはある一人の魔女の存在から始まった。」 部屋が暗くなり、男の後ろにスクリーンが現れる。 俺は顔を上げ、スクリーンを見つめた。そこには歴史の教科書にあるような絵が映し出されていた。 人型の何か…よく解らない。 「彼女は特殊な力を持ち、ある時代では魔女…またある時代では霊媒士として、時代と世界を転々としながら力ある者を配下に置いていった。そして彼女に会うものはその存在の異様さに危機を感じ、私たち『木の根』を作り上げた。だが、ここ数十年姿を見せなかった彼女から五年前にコンタクトがあった。」 スクリーンが切り替わる。 殺人現場…ぐちゃぐちゃにされて血だらけの人型が路地の突き当たりで倒れている。その壁に血で書かれた文字… 「期は熟した。この偽りの世界に、永過ぎた遊戯に終止符を。」 男がそのまま読み上げた。 「ちなみにこの被害者は我が組織の者だ。当時はかなりの使い手だったが、通信をする間もなかったらしい。」 スクリーンが消え、部屋が明るくなる。 「君にはこの組織に加わってもらうが、詳しい処遇についてはしばし保留。追って連絡を入れる。この施設は自由に歩いていい。他の者とも話すといいだろう。あとで案内役を連れてくる。」 そう言って男は部屋を出た。
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